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Essay 菅野 文友氏(解析の 食わず嫌いは チャンスロス / ミセスでも ヒューマンエラーは ミスなのさ)

解析の 食わず嫌いは チャンスロス


(有)系統技術研究所
代表取締役 菅野 文友 氏

各地方自治体では,いろいろなデータを毎月集計している.しかし,そのデータを解析する習慣は僅少である.解析による付加価値などに無関心を決め込むのが,天地開闢以来,人類最高の美徳と心得ている節がある.そういった地方自治体のバラツキの様相は,それぞれのホームページを垣間見ても察知される.筆者の居住する故郷もまた,例外ではない.

長い間克明に収録されているデータの一つに,市外からの毎月の来訪者数(A)がある.Aの主体は,いわゆる観光客数である.毎月,かなりの変動が見られる値である.市内居住人口の減少,シャッター商店街の現出などから,Aの年間集計数も年々減少している筈と見られがちである.しかし,QCASを使用した回帰分析からは,明らかに着実な増加傾向が見られる.その結果を見て驚くのは,気軽に解析しようとしない習慣の負の効果である.

さらにAの値の季節変動を調べてみると,毎年夏季に高く冬季に低いことは,感覚的に知られている.それでは年間平均(100%)に対して冬季最小値と夏季最大値は?と問うと,最小値は50%とかなり高めに,また最大値は2ないし2.5倍と相当低めに,自信ありげな回答が戻ってくる.連環比率法による解析結果は,それぞれ2月が20%で8月が400%となる.この値は,ここ10年間で大きな差は見られない.データを直視しないための先入観との差は大きい.このような事実を開陳しても,解析意欲は浮上せず,手法学習の必要性も意識されない.ましてや解析結果の活用などは,全く見られない.

ごく簡単な例では,世帯数と人口数は把握されている.しかし,一世帯あたりの人口数を時系列的に見た値を,近隣の市と比較する習慣は無い.基準化した値を時系列として図示比較するだけで自治体間の大きな違いが見られるのに気づかないのは,機会損失(チャンスロス)そのものである.このように,QCASで簡単に解析/作図できるという付加価値実現が,地域行政に生かされないまま,工数を投じた集録データが漫然と蓄積されたままになっている.これは,まさしく,中央官庁の実態を投影している様相そのもの,ではなかろうか?(2003-02-27 菅野 文友)

ミセスでも ヒューマンエラーは ミスなのさ

世の中全て,建前があれば本音がある.表があれば,裏がある.光には,影が伴う.行動には,誤りが付きまとう.ソフトウェア生産の誤りも,無意識ならばバグで済むが,意識すれば犯罪プログラムを出現させる.人間の意識的活動には,無意識のヒューマンエラーが付随する.

ある意味では,ヒューマンエラーという現象は,それを出現させる根源的事象のインジケータでもある.伏在する基本事象から由来した前駆現象でもある.このことは,システム信頼性データの解析などでは,特に重要な理念の一つである.身体的不調の頻発が自覚されると,何か病気かと思われる.間歇的な不具合の出現間隔が狭まってくると,やがて永久的な不具合となる.人間の場合も,行動のミスの出現間隔が縮減してきたら,程なく文字どおりの致命的なものとなりかねない.

世に,一病息災という.不具合を検出し易い持病を保有していると,それを全身不調のインジケータとして,保全に努めることにより,結果として長命を保持するようになる意味である.システムの高信頼性設計に際しても,意識的に弱点を形成する合意が大切である.ヒューマンエラーについても,それを出現する人間固有のエラーの特色を把握しておけば,当人の行動によって招来される危険性を,予防保全できる可能性が高くなる.

要するに,ミスのデータも,きちんと『層別』して記録し,QCASによる多彩な解析をしておくことが,『備えあれば憂いなし』の具現であろう.何事も,「一視同仁」という美名の陰に隠れた「味噌も糞も一緒」は,怠慢な「似て非なり」であり,解析の根源的理念として不可である.(2003-03-25 菅野 文友)

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