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第16話  データ解析7不思議とさかのぼり型なぜなぜ問答(六一学者の千字一話)

吉澤正先生御逝去に寄せて

六一学者の千字一話  六一学者 (吉澤 正氏)
六一学者 - 吉澤 正氏
(第10回JUSEパッケージ活用事例シンポジウムにて)


世の中にはしばしば7不思議といわれるものがあるが,先日,環境ISO(ISO14001マネジメントシステムの審査登録制度)についてよく出される質問や疑問を「7不思議」としてまとめてみた.

  1. なぜ,環境マネジメントシステムが国際標準なのか
  2. なぜ,ISOでの合意が短期間にできたのか
  3. なぜ,日本の審査登録件数が世界でダントツなのか
  4. なぜ,環境省でなく経済産業省がバックなのか
  5. なぜ,環境マネジメントシステムはシステム規格なのに環境保全に役立つのか
  6. なぜ,自治体は熱心なのか
  7. なぜ,筑波大学なのか

番外 なぜ,日本環境保証機構は日本品質保証機構に抜かれたか

という具合である.

なぜ,こんなことを考えたのか?それは,筑波大学社会人大学院説明会(2002年7月6日(土)の予定)で講演するためのテーマを考える必要があったからで,結局,テーマを「環境ISOを研究しよう−その7不思議を考える−」としてみた.以上のような疑問をとりあげ,大学院での研究では,いかに材料を見つけ,いかに料理するのか考えてみるので,よろしければお出かけ下さい.

ところで,その7不思議を考えながら,二つのことが気になった.一つは,英語のWhyはいつも文章の先頭にあるのに,日本語の「なぜ」は,文章中のいろいろなところに使われることが可能で,語順に関して自由なのはなぜだろう?ということ.二つ目は,「データ解析7不思議」は何かということである.

例えば,「おー,ロメオ,ロメオ,なぜ,あなたはロメオなの?」という有名がセリフがシュークスピアの悲劇「ロメオとジュリエット」にあるが,「あなたは,なぜロメオなの」とか「あなたがロメオであるのなぜ?」といえないことはない.

「六一学者の千字一話」は,統計やデータ解析に関係する話題を取り上げているので,こんな話には,深入りしないで,「データ解析7不思議」に移ろう.定説があるわけではないので,海外からよくきかれることを中心に,筆者の勝手でいくつかの不思議をあげてみる.

データ解析7不思議

  1. なぜ,特性要因図は統計手法を集めたQC7つ道具の一つなのか.しかも筆頭である.
  2. なぜ,なぜなぜ問答は7つ道具に入っていないのか.
  3. なぜ,日本の大学には統計学科やデータ科学科がないのか?
  4. なぜ,日本の産業界ではQC手法などとしてデータ解析がよく普及したのか?
  5. なぜ,日本企業にはスタティスティシャン(統計専門家)が少ないのか?
  6. なぜ,日本ではJUSE・MA以外のよい統計ソフトが開発されないのか?
  7. なぜ,田口メソードは統計手法でないのか?

簡単に解明しがたいところが,7不思議の不思議たる所以(ゆえん)であるが,外国で聞かれて返答につまることも多いので,簡単な答えを用意したいものである.皆さんの意見を聞かせてください.

さて,QC7つ道具は,特性要因図,パレート図,ヒストグラム,散布図,層別,グラフ,管理図など,だれでも使えて役に立つ統計手法をまとめたものであるが,特性要因図は,不適合を起こした品質問題や工程の課題についてその原因を洗い出して,魚の骨のように描いたもの.それ自体はデータ解析を行うような手法ではないが,海外でも“Fishbone Diagram”とか,発案者の石川馨先生の名前から“Ishikawa Diagram”ともいわれて広く知られている.

「なぜなぜ問答」も特性要因図と並んで日本発の問題解決用のツール.英語には“WhyWhyダイアグラム”と翻訳されている.その名前のように,問題があるとその原因をなぜかと問い,その答えに対してまたなぜか,なぜかと繰り返し原因を掘り下げ,樹形図のように図にも描いて,原因解明を行う.普通は5段階ぐらいまで掘り下げよといわれるが,「だれだれさんのせいだ」と人の名前が出るようならそこで止めるという停止規則も使われる.

いままでは,原因追求型のなぜなぜ問答であったが,なぜ(英語のWhyでも)には,大別して,その原因を聞く場合と,その目的を聞く場合がある.最近の時世のように,いろいろな不祥事が多いと,その原因追求も大切であるが,何のために仕事をしているのか,何のために働いているのか,何のために生きているのかと目的を問うなぜなぜ問答も必要である.そのような目的にさかのぼる問答を,「さかのぼり型なぜなぜ問答」とか「目的追求型なぜなぜ問答」といってはどうか.


2002年4月24日掲載

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