六一学者 - 吉澤 正氏
(第10回JUSEパッケージ活用事例シンポジウムにて)
以下は,森口繁一先生の米寿を祝う企画として,一人600字以内ということで書いた文章です.これを9月11日のメールで送りました.
最近,『エコロジカル・マインド−知性と環境をつなぐ心理学』(三嶋博之著,NHKブックス881,2000年3月)をおもしろく読みました.アメリカの心理学者ジェームス・J・ギブソンが創始した生態心理学の立場から,知性は環境の中にあることを主張しています.生態心理学の最も重要なキーワードは「アフォーダンス」(affordance)という言葉で,それは,通常「環境が,その中で生きる動物に与えてくれる行為の機会」を指すそうです.
さて,つねづね,森口先生の知的ライフスタイルに感銘を受けておりますが,森口先生の生活環境とアフォーダンスについて,二つの発想が浮かびました.
一つは,知的好奇心に溢れた学者として先生の御著作からの発想でもありますが,知的活動家にとってのアフォーダンスは知的チャンスといえるのではないかということです.以前,御著書『Excel/Basic基礎指南 - 知らないことを知りたい人へ』の書評を日本規格協会から依頼され,「好奇心に満ちあふれ,好奇心を刺激する書」と恐れ多くも書かせていただきました.好奇心とは環境からの一つの刺激ですが,そのチャンスを生かすことが知的活動家にとって重要であることを先生から学びました.
もう一つの発想は,変ないい方ですが,「学者の妻の夫」そして「学者の娘の父」としての先生のライフスタイルからの発想です.環境に対して,一見受動的に見えながら,自分の環境に対して影響を与えて環境自体を作り出していくという能動的なエコロジカル・ライフスタイルは,先生のライフスタイルの一面でしょう.
不肖の弟子ながら,「学者の弟子の先生」として一層のご健勝をお祈り致します.
その日の内に,返事をいただきました.
「森口より
文集の原稿いただきました.大変変わった表現で,大切なことをズバリと言い表す腕前は抜群ですね.私は勿論いい気 分で読みました.赤尾君からも届きました.あなたに促されたと添え書きして.
どうもありがとうございました.奥さんによろしく.
早々」
なお,「学者の妻の夫」という表現では,妻が学者というのでなく,夫が学者ですが,学者である夫がその環境の一部である妻に作用し,そして妻が夫に作用するということを意味しています.そこで,森口先生は,君の面倒を見ている奥さんによろしくという言われているのです.
2002年12月12日掲載
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