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第44話 シッチャーマンのサイコロ(六一学者の千字一話)

吉澤正先生御逝去に寄せて

六一学者の千字一話  六一学者 (吉澤 正氏)
六一学者 - 吉澤 正氏
(第10回JUSEパッケージ活用事例シンポジウムにて)


写真1
写真1.奇妙なサイコロ

写真1のサイコロを見ると,アレッ?と,おかしなことに気付かれよう.左側のサイコロには,数字の“2”が書かれた面が二つ見えるし,右側のサイコロには,“8”と書かれた面がある.普通のサイコロは,1から6のしるし(マーク),ときにはそれらに相当する数字が書き込まれた面が一つずつのはずである.

普通のサイコロなら,その展開図は図1のようになるが,写真の二つのサイコロの展開図は図2のようになっている.

左側のサイコロの面は,1,2,2,3,3,4で,2と3が2回ずつ,最大は4となっている.右側のサイコロは,1,3,4,5,6,8で,2が抜けて8になっている.

図1.
図1.普通のサイコロの展開図

図2.
図2.写真1のサイコロの展開図

写真2.
写真2.サイコロの入っていた箱

この変なサイコロは,この夏にロンドンのカムデン・ロックという愉快な町のおもちゃ屋さんで見つけたもので,写真2の小さな箱に入っていた.そこに写っているのは,このサイコロを発明したアメリカのニューヨーク州バッファローのシッチャーマン(Colonel George Sicherman)という人であるという.

この2つのサイコロは,普通のサイコロと各面の数字は異なるが,二つを同時に振ったときの目の合計の分布が普通のサイコロの場合と一致する.実際に,エクセルで目の組み合わせを表にし,合計の数値の度数を調べてみると,図3のようになる.ちなみに,普通のサイコロなら図4のようになり,目の和の表に出現する数値の度数は図3と一致している.

インチキのないサイコロなら(それぞれのサイコロの面が1/6の確率で出現し,サイコロ同士では独立と仮定されるなら),和の確率分布は,図3や図4の度数を36で割ったものと考えられる.

図3.
図3.2つのサイコロの目の和の分布(シッチャーマンのサイコロ)

図4.
図4.2つのサイコロの目の和の分布(普通のサイコロ)

あとで,インターネットで調べたら,このサイコロはシッチャーマンのサイコロといわれており,数学的クイズの世界で有名なガードナー(Martin Gardner)によって1978年に雑誌『サイエンティフィック アメリカン』に発表されたという記事が幾つかのサイトに載っていた.その後ガードナーからシッチャーマンに宛てた手紙で,知り合いのマジシャンがそのようなサイコロの可能性を知っていたと書いているそうだ.

また,六一学者が入手したものの一つの展開図は,図2のようであるが,普通のサイコロの場合,表と裏の対となる面の数字の合計が6であるように,シッチャーマンのサイコロでは,図5に示すように,目の数字の小さいほうでは5,大きいほうでは9になるようデザインすることができる.

図4.
図5.表裏の対の合計を一定にしたときの展開図の例

この千字一話シリーズでは,
第1話「データ解析はサイコロから」 で以来
第22話「サイコロゲームで新年を占うーインド双六(すごろく)は双四(すごよん)だったー」
第23話「サイコロ占い」
第24話「インドサイコロの確率計算」
などとサイコロを取り上げてきた.2007年夏の旅行では,ポルトガルのリスボンで,独楽(コマ)とサイコロをあわせたようなラパというゲームを見つけた.次の第45話で紹介しよう.


2007年11月12日 掲載

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